
「終活ブームだから」「子供に迷惑をかけたくないから」と、焦って墓じまいを決めるのはちょっと待ってください。その決断が、実は家族の縁を断ち切り、あなた自身の心を一生苦しめる「最大の過ち」になるかもしれません。
「みんながやっているから」という理由が一番危険です。先祖代々のお墓を更地に戻してしまった後で、「やっぱり残しておけばよかった」と涙しても、もう石は戻りません。
本当にお墓を処分する必要がありますか?墓じまいを「しない」ことが、実は最高の親孝行であり、子供への愛情であるケースも意外と多いのです。後悔しないために、一度立ち止まって考えてみましょう。
墓じまいをして逆に泥沼?よくある「やめておけばよかった」事例
最近、テレビや雑誌で「墓じまい」という言葉をよく見かけますよね。「子供に負担をかけたくない」という親心、本当によくわかります。でも、私の周りでも、良かれと思って墓じまいをしたのに、かえって大変なことになってしまった人が結構いるんです。
まずは、どんな時に「墓じまいをしないほうがよかった」となるのか、実際にあったお話やよくあるトラブルを見ていきましょう。
「心の拠り所」がなくなってしまった喪失感
私の知人の70代の女性、Aさんのお話です。Aさんは「私が元気なうちに」と、ご主人が眠るお墓を処分し、遺骨を合同のお墓に移しました。手続きが終わった直後は「これで肩の荷が下りた」とスッキリされたそうです。
でも、最初のお盆が来たときです。「あ、お墓参りに行く場所がないんだ」と気づいて、急にどうしようもない寂しさに襲われたとおっしゃっていました。「お父さんに愚痴を聞いてもらう場所がなくなっちゃった」と。
お墓って、単なる石ではなくて、亡くなった方と対話できる「専用電話」のような場所なんですよね。自宅の仏壇とはまた違う、特別な空気がそこにはあります。もしあなたが、お墓参りに行くことで心が落ち着いたり、元気をもらえたりしているなら、無理にその場所をなくす必要はないのかもしれません。心の健康のために「維持する」という選択も大切なんです。
親戚から「なんで勝手に!」と総スカン
これが一番怖いトラブルかもしれません。本家の長男だからといって一人で決めてしまい、親戚中から非難を浴びてしまったケースです。
遠くに住んでいる親戚にとって、お墓参りは「故郷に帰る理由」であり、親族が集まる大切な機会だったりします。「お墓がなくなったら、もうみんなで集まることもないね」なんて寂しいことを言われてしまったり、最悪の場合、「ご先祖様を粗末にした!」と絶縁状態になってしまったり。
「管理しているのは私だから」という理屈は、感情論の前では通じないことも多いです。親戚との良好な関係を守るために、あえて今の形のお墓を残しておく、というのは立派な理由になります。
「墓じまいしない」が正解かも?迷った時の3つの判断基準
では、具体的にどんな人は墓じまいを「保留」にしたほうがいいのでしょうか。もし以下の3つのポイントに当てはまるなら、今は動くべきタイミングではないかもしれません。
1. 実は子供たちが「お墓参り」を嫌がっていない
ここ、すごく大事なポイントです。「子供に迷惑をかけたくない」と親は思いがちですが、一度お子さんやお孫さんに本音を聞いてみたことはありますか?
実は、「たまにお墓参りに行って、そのあと家族でおいしいものを食べるのが毎年の楽しみ」と思っているお子さん世代も多いんです。お墓掃除が大変なら、掃除だけ外注するという手もあります。
「お墓=負担」と決めつけず、「お墓=家族の絆を確認する場所」として機能しているなら、無理になくすことはありません。子供たちが「守っていきたい」と言ってくれるなら、その気持ちに甘えてもいいのではないでしょうか。
2. 費用対効果が見合わない(高額すぎる)
墓じまいには、びっくりするほどお金がかかります。 お墓の撤去工事費、お寺への離檀料(りだんりょう)、新しい納骨先の費用、行政手続きの手間賃などなど。全部合わせると、数十万円から、場合によっては200万、300万円とかかることも珍しくありません。
もし、「年間の管理費数千円〜1万円程度」を払うのが惜しいという理由で墓じまいを考えているなら、計算機を叩いてみてください。墓じまいにかかる200万円があれば、あと何百年管理費を払えるでしょうか?
ご自身の老後資金を大きく削ってまで、今すぐお墓をたたむ必要があるのか。経済的な面から冷静に「維持するほうが安い」と判断するのも賢い選択です。
3. まだ「心の整理」がついていない
これが最大の基準です。「お墓をなくすなんて、バチが当たるんじゃないか」「ご先祖様に申し訳ない」という気持ちが少しでもあるなら、絶対に急いではいけません。
その「モヤモヤ」は、手続きが終わった後に「後悔」へと変わります。 「誰も継ぐ人がいないから仕方ない」と頭ではわかっていても、心が納得していないなら、それは「時期尚早」だというサインです。
お寺さんに相談すれば、永代供養(えいたいくよう)の予約だけしておいて、自分たちが元気なうちは今まで通りお墓を残す、という方法も提案してくれるはずです。
完全に閉じるだけが道じゃない!「維持」しながら負担を減らす方法
「墓じまいをする」か「しない」か、白か黒かで考える必要はありません。その間の「グレー」の選択肢が、今の時代にはたくさんあります。
お墓参り・掃除代行サービスを賢く使う
「体力的に掃除がきついから墓じまいしたい」という理由なら、プロに頼んでしまいましょう。最近は、お墓の掃除やお参りを代行してくれるサービスが充実しています。シルバー人材センターにお願いすれば、比較的安くやってくれる地域もあります。
年に1、2回プロにお願いして、きれいな状態を保てるなら、無理にお墓を壊す必要はありませんよね。「お金で解決できる負担」なら、解決してしまったほうが、精神衛生上ずっと良い場合もあります。
「永代供養付き」のお墓にリフォームする
最近増えているのが、今あるお墓の場所に、ご遺骨を移さず、お寺に「期限付き」で管理してもらう契約に変える方法です。
例えば「あと30年はここでお参りしたい。その後は合祀(ごうし)して土に還してほしい」といった契約を結べる霊園やお寺が増えています。これなら、今すぐお墓を撤去する必要はなく、将来の「無縁仏」になる心配もありません。
最後に
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。 「墓じまいをしなきゃ」と、何かに追い立てられるような気持ちになっていた方も、少し肩の力が抜けたのではないでしょうか。
お墓の問題は、正解がひとつではありません。 ご先祖様が一番望んでいるのは、立派なお墓があることでも、逆にお墓をきれいに片付けることでもありません。今を生きるあなた自身が、笑顔で心穏やかに暮らしていること。それが一番の供養になるはずです。
「まだ迷いがあるな」と感じたら、その迷いは「まだその時じゃないよ」というご先祖様からのメッセージかもしれません。焦らなくて大丈夫です。ご家族とゆっくりお茶でも飲みながら、「うちはどうしようか?」と話す時間そのものを、まずは大切にしてみてくださいね。



